遠藤照明

「くらしとあかり」プロジェクト

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第1回:トラフ×村角千亜希 2007年11月 第2回:井上搖子×角舘政英 2008年2月 第3回:ヨコミゾマコト×松下美紀 2008年5月 第4回:藤本壮介×石田聖次 2008年8月 第5回:棚瀬純孝×中島龍興 2008年11月 第6回:乾久美子×伊藤達男 2009年2月 石田聖次 伊藤達男 角舘政英 中島龍興 松下美紀 村角千亜季 乾久美子 井上搖子 棚瀬純孝 トラフ 藤本壮介 ヨコミゾマコト

角舘

 これはまた別のプロジェクトです。これは大阪駅前のヒルトンプラザのコンペのときの最初のイメージです。僕は、この大阪の駅前にできる新しい建物が、何か象徴的にライトアップされる必要はなく、この新しくできた建物の魅力として、やはりこの建物にしかない光環境をつくりたいと思いました。


 ではこの建物にしかない光環境とは何なのかというと、この建物に集まってくる人たちだと考えました。ではこの集まってくる人たちは誰かと考えて、このような計画になりました。誰が見ても下は物販だし、この中間階は誰が見てもレストランだし、上層階は誰が見てもオフィスなんですよね。オフィスでは誰かが働いている。レストランでは誰か食事をして、お酒を飲んでいる。下の階では誰かが物を買っているという、すごく当たり前の人のアクティビティみたいなものが、この建物の表情になったらいいなと思いました。


 具体的には、人がいなくなったところは建物がライトアップされるといういうようなオペレーションをしています。要するに人のオンとオフというものを、光の表情によって表現できないかなと。人がいるところは人のいる表情でいいけれども、人がいなくなったところは、その建物の特徴的な部分が認識できるようなライトアップをしましょうというオペレーションです。


 ではその内部空間はどうなっているのかというと、共有部分の廊下についても同じような考え方で、共有部分が目立つのではなく、ショップのファサードが目立つような光環境をつくっています。ショップファサードが目立つということは、その店舗が目立つ。この建物にしか集まっていない店舗が目立つということは、この建物の持っている一つのアクティビティになる特徴が表れるのではないかという考え方で計画をしました。


 僕が今回のエキシビションでテーマにしたかったのは、コミュニティという概念です。一昔前までは、木造アパートや木造の家、古いマンションなどでは、音などで周りの家の気配というのを感じていたと思います。ところが今の集合住宅というのは、少しでも音が漏れるとだめですよね。この間もあるマンションの仕事をやったんですけれども、そこで音が漏れるというのが大騒ぎになりました。そういう意味で、人と人のコミュニティとは何なのか、例えば集合住宅で人とのコミュニティは本当に大事なのかと考えさせられます。僕なんかは、集合住宅で生活していたら、周りの人と接したいと思わないんですね。ではそういうコミュニティとは何なのか。一軒家だったら近隣の人とちゃんとコミュニティをとらなければいけないのかなと思いますけれども、こういう集合住宅では周りとの関係がどうなってくるのかと考えて、少し音も聞こえていますけれども、光で周りの人の生活の気配みたいなものを感じる中で生活していったらどうなるのかとイメージして、このような空間をつくりました。


真壁

 どうもありがとうございました。特に今回は暮らし、つまり住宅ないしは集合住宅の中でのあかりの役割とはどういうことかという視点で、もう一度考えていったわけです。第1回エキシビションも単身者の限りない声を拾っている場面も描いたのですけれども、今回も単身者の生活、しかもさらにそれが集合していくという場面。そういう中で、世代的には人とつながることが少し疎ましいと思いつつも、何か可能性として少し触れ合いたいという、そういう時代の感性があるのではないかなと思います。そしてあかりというものを手がかりに、建物の外観のファサードの表情、それから暮らしという居室の中での他者の気配という、この二つの気配を非常に実験的に今回はやっているわけです。


 もう一度この状況を見ていただきますと、今、このテーブルにあかりが落ちているのは、映像で言うと右端の部屋で食事をしている人、ベッドの青い光は中央の寝ている人、左端の部屋ではソファで雑誌を広げている。冒頭申し上げたようにここのスペースの中では3人の生活がダブりながら光がダンシングしているという、そういう眺めなんですね。


 ですから実際今、右端の部屋の人は台所で何かつくっているんだけれども、「お隣はもう休んでいるな」という気配もわかるような仕組みを、試みているわけです。


角舘

 個人的には、アンチテーゼというものもあって、学生の設計などを見ていると、こういう集合住宅などはたいてい、コミュニティというものをテーマにして空間をつくっていくんですよね。ところが、アパートに住んでいて周りの人間と接したいと思うのかと聞いたら、接したくないと言うんです。なのに設計の中ではコミュニティを夢見て空間をつくっているというのがすごく多い。


 ですのでここでは逆に、あえて周りの気配というものをダイレクトに感じる空間をつくって、今はインスタレーションだけれども、生活の中で本当にこういう状況になると考えたとき、いたたまれない人もいるだろうし、逆にこれをすごく心地いいと思う人もいるかもしれない。そういうような問題提起になったらいいなと少し思っています。