真壁
どうですか伊藤さん、この第5回の「くらしとあかり」エキシビションで提示している意味というのは。まだ完成度からすると100%ではないけれども、こうした日中の作業と、夜での体のいやし方、そしてシャドーフォーム。つまり、暗がりの形を家の中に取り込むことで、もっと豊かなくらしができるだろうと思うのですが。
伊藤
皆さん、この空間を見て、すごく暗いなと思っていらっしゃると思います。けれども今、中島さんがおっしゃったように、本来人間は、この時間帯、これぐらいの明るさで暮らすのが最も自然なんじゃないかと思いますね。
真壁
これでも明るいのかもしれない。
中島
そうですね。
伊藤
今は多くの住宅が非常に明るい。それは結局、機能のための空間になってしまっているからで、それを照明だけでどうこうということはなかなか難しいのですが。
ただ、皆さんには、本来はこういう空間が人間にとって一番いい明るさなんだということを、覚えておいてほしいと思いますね。
真壁
しかし、こういうところでじわっと和んでいると、やはりテレビというのは厄介ですね。
中島
厄介ですね。
真壁
どうあったらいいんでしょうね、テレビって。
棚瀬
毎日見てますけどね(笑)。
真壁
つまり、私たちはテレビに対しても非常に無自覚ですよね。
中島
また部屋の照明とは違った質の光なんですよ。結局、ふだん生活している光じゃないんですね。例えば、ディスプレイに内蔵されている光源の光の色からいって非常に青白い。日常的にはそういう青白い光を使いませんが、我々はカラーの画像を見てごまかされているんですね。夜にあの青白い光を浴びたら、眠れなくなったり、長い目で見るといろいろ……。
真壁
障害が生じている。
中島
ですから、テレビというのはないわけにはいかないと思うのですが、その見方には注意しなくちゃいけないですね。
あるいはテレビの中の光源というか光質を変えてもらわないといけない。例えばこれは聞いた話ですが、ある電器メーカーさんは、日本で出荷するテレビとヨーロッパに出荷するテレビとで、輝度と色を変えているというのです。日本人の感覚とヨーロッパの人の感覚が違うから。つまり、それは変えられるわけです。日本人の感覚だって、最近は少しヨーロッパ人に近いかもしれない。
そういう意味では、あかりとしての照明が幾らよくなっても、そこにテレビのような光があったら効果が半減する。
伊藤
昔は、青白い蛍光灯が今よりもっとあったと思います。それがだんだん、若い人は結構暖かい光を好んで使い始めているし、少しずつ変わりつつあるような気がしますね。

多分、青白い光を好まれるのは、ある程度の年齢の方だと思うんですよ。ちょうど蛍光灯が戦後普及し始めたときに、その環境の中でずっと育ってこられたわけだから、多分それが一番心地よく感じられているんだろうと思うんです。それは別に悪いことじゃないんですけれども、それがひとりでに好きになってしまっているという部分があると思うんです。けれども今の若い方たちはそういうことにはあまりこだわらない。白い光も場合によっては使うし、暖かい光も使う。そういうふうに、その場に応じて使い分けられるようになればいいんじゃないかなと思います。
本来はやはり、先程中島さんがおっしゃったように、夜が更けていくと、だんだん色温度が低くなって、波長が長い光の中で暮らす。最終的にはそれが就寝に結びついていくというのが、本来のリズム、人間のリズムですから、そういうことを促すためにも、やっぱり夜は暖かい光がいいと思っています。
それから、もう一つ付け加えると、今回使用しているピンスポットの中に入っているハロゲンランプのような白熱灯は、非常に多くの赤外線を含んでいるわけです。これは、蛍光灯もある程度含んでいますけれども、白熱灯ほど多くない。このあかりは、これだけ照度を落としても寂しくないんです。蛍光灯とかLEDで照度を落としていくと、ちょっと寂しい雰囲気になってしまうのですが、白熱灯ではそういうことはありません。相当絞っても豊かなんです。その辺りを中島さんにいろいろお話ししていただきたいと思います。