事務局
第2回エキシビションにご参加いただいた建築家の井上搖子さんがいらっしゃっていますので、ぜひ一言、ご質問をよろしくお願いします。
井上
こんにちは。井上です。藤本さんは最初のイメージで、液体のような光をつくりたいというプロポーザルをされていたと思うんですね。今日会場に入ってみて、まず天の川のようだと思いましたし、液体のようというのもすごく納得できるような気もしましたが、どうして液体と今のこれがつながるんだろうとも思いました。藤本さんの液体というイメージ、それもくらしの中に取り入れられる液体というイメージは一体何だったのかをお聞きしたいと思います。
藤本
これも無責任に聞こえてしまうかもしれませんが、僕はどんな建物を設計するときも、最初のイメージを言葉にするときは、意外といいかげんに、まずは言葉を発してしまうんです。その後で、自分で発した言葉を自分で聞いて、それって何なんだろうというふうに考え始める。言葉というのは自分で発すると、ほかの人も聞けるじゃないですか。そうすると、ほかの人はほかの人なりに、勝手な解釈をどんどん積み上げていって、気がついたら、最初言った言葉と全然違うことになっているけれども、「すごくおもしろいね」というものになっているのが、僕はすごく好きなんです。事務所でスタッフとやりとりしているときもそうですし、今回のように全く違う分野の方とやりとりしているときも、言葉のそういう力に僕はすごく楽しみを見出しているんです。
ただ、責任もとらなければいけないということで、今回、液体と言ったところから、最初はどろどろした空間みたいなものをイメージしていて、空間の粒子の一個一個が光っているとどうなるんだろう。水の粒子でもいいですけど。そうすると、全体がぼんやり光り輝くようなエリアができるんじゃないかというあたりから始まったんです。その先は、ファイバーというものが出てきて、これはすごいおもしろいねということになって、そちらにシフトしていきました。

ただ、最後にこの低いエリアをつくったときに、床に反射するさまも含めて、光の水たまりみたいなものができたなと思いました。家の中に水たまりがあったら、これは嫌だと思うんですけど、光の水たまりみたいなものがあって、そこに足でも突っ込んだり、ザブンと入ったり、その光の水たまりらしきものとかかわりながらだらだらする生活というのは、なかなか豊かなのではないかなと、前日になってようやく液体に戻ってきました。
そういう偶然なんですけれど、戻ってきてみると、僕が最初に言った液体と最後の液体は違う液体ですけれども、その間のプロセスの分、豊かになっているのではないかなという気がしました。
井上
ありがとうございました。
事務局
それでは、定刻になりましたので、この辺で終わりにしたいと思います。建築家の藤本壮介さん、照明家の石田聖次さんでした。どうもありがとうございました。(拍手)
-終了-