真壁
石田さん、協力してくれたメーカーさんへの謝辞も含めて、光ファイバーというのはどういうものなのか、ちょっとレクチャーしていただけますか。
石田
この光ファイバーの光源器は天井裏に置いてあります。今回、光源はシップス株式会社さん、ファイバーはシーライティング株式会社さんに、それぞれご協力いただきました。
ファイバーは樹脂ファイバーで、0.5ミリのものを使っています。光源には、RGB三原色を持っている30ワットのLEDを使っています。今回の光源器はかなり小さくて、これでかなりの色を出しますので、これはいいなと思っています。
しかし、このLEDというのがちょっと曲者なんです。今回調光をかけているんですが、昔は電圧で調光していたんですけれども、最近の調光はいわゆるパルス、波長をカットするんです。LEDというのは、電気が通ると瞬点して、消すとすぐ消えるという特性があります。よくある白熱灯の電球は、電気をつけると少し温まって点灯して、電気を消すと冷えて消えるので、電気が通っている間の時間帯と点灯している時間帯に、少しタイムラグがあるんです。

さっき言ったパルス調光は、細かく電気の出力を切っている状態になります。白熱灯ではわからないんですけれども、LEDのように、電源のオンオフのタイミングが点灯のタイミングとイコールになってくると、調光をかけているときにこのようにファイバーを振ると、光が点々になって見えます。これが今回の演出の中ではすごく効いていると思っています。
それからこの白い光の色ですが、これはRGB、赤と緑と青の三原色でつくっています。演出では、入り口で白色と電球色の変化、中央で光の強弱の変化、一番奥で赤系・緑系・青系の白のクロスフェードを行っています。入り口の電球色に近い白は、部屋の奥から見たときと外から見たときとで、電球色の黄色みというか赤みの見え方が全く違います。外から見るとかなり黄色みが強くなって見えます。それは、こちら側の青い光が影響している状態と、していない状態の違いです。後でゆっくり見ていただければと思います。
真壁
それと今、光源の効率がよくなっているでしょう。
石田
そうですね。今回は1台あたり30ワットのLEDを12台使っていますので、トータル360ワットで室内が構成されているということになります。ファイバーは約1500本ですので、1本あたり0.25ワット弱程度のあかりということになりますね。LEDは使い方によっておもしろいことができるだろう、LEDならではの使い方がやはりあるだろうと思います。
真壁
石田さん本人は照れくさいだろうけども、石田さんの絶妙なアイデアがプログラムを含めてこの中に隠されていると思うんです。伊藤さんから見て、いかがですか。
伊藤
LEDを使ったファイバーは以前からあったんですけども、今回の光源はものすごくコンパクトにできているんです。コンパクトにできているということは非常に集光もしやすいわけで、何よりもさっき石田さんが手に持たれていましたけれども、非常に小さい。今までのファイバーの光源は、250角ぐらいの立方体の大きな鉄の箱だったんですが、それがさっきのような小さな光源になって、しかもRGBがその中に入っている。今までの機械仕掛けの大きなものを使うとなると気分的に抵抗感があるんですが、こういうコンパクトなものが気軽に使えるということは、スマートな仕事がしやすいという印象を受けますね。とてもいいものを石田さんは見つけてきたなと思いました。
真壁
「液体のようなあかり」というテーマから、どのようにこの発想に至ったんですか。
石田
それは、やはり光が浮遊するというところですね。具体的に液体ではなくてもいいから、光が浮遊するということになると、ファイバーかなと思いました。
真壁
藤本さんを中心にみんなでスタディーしていく中に、三つの島をつくろうというイメージになりましたね。この三つの固まりというか、うつろなフォルムというか、そのイメージはどういうところから生まれたんですか。
藤本
さすがに僕も、そろそろくらしについて考えなきゃと思ったんですね。(笑)あかりのイメージはいろいろ楽しくなってきたが、それがくらしにどう関わるのかというのが、いまいちよくわからなかったんですね。
まず、あそこの入り口を入ったところにあるような、単純にボーッと光の固まりになっていて、その中に泳いでいくような、そういうものは欲しいなと思っていました。次に、実際こういうあかりがくらしの中に入ってきたときに、どんな状況が想像できるかなと考えて、一つは、この床上30センチぐらいに光が集まっている状態をつくりました。最初これはおふろにつかるような感じで、光につかるようなものはできないかなと思ったんですよ。
本当は50〜60センチぐらいまで上げておこうと思ったんです。ところが、最終的に設置するときに偶然この高さになっちゃったんですよね。(笑)そうすると、床にあかりがすごくおもしろく反射して、それが動くと揺れる。これはこれでおもしろいなと。光の水たまりみたいになったんですね。
あと、どういう光のシーンがあるか。単純に大きなボリュームの中に分け入っていくというシーンと、光につかるような感じのシーンと、もう一つぐらい何かシーンが欲しいなと考えて、最終的にそこの銀河系みたいに浮かんでいるシーンができました。その真ん中にクッションが置いてありますけれども、あそこにずぼずぼっと入っていって、座るなり、寝るなりしてボーッとする場所なんです。寝る場所になってもいいなと、できてみて思いましたし、自分の周りを光が取り囲んでいるような場所をつくってみました。
本当の宇宙空間みたいに光がたくさん浮いている中で、例えば2人の人が向かい合って話をしているってどんな感じだろうということを話しながらつくっていました。人と人の間に光が入ってきてしまうんですけれども、でも、あまり苦にならない。それが距離感をつくったり、場を共有している感じをつくったり、というのもおもしろいかなと思いました。
このスペースの大きさを考えたら、三つぐらいあって、それをじかに体験する人と、光が動いたり、人の周りに光がまとわりついたりするのを周りで見ている人のスペースがあるかもしれない。そのようなことを考えて、だんだんこの形になってきましたね。