真壁
今日は第2回エキシビションでご参加いただいた井上搖子さんがいらしているので、お話を伺いましょうか。
井上
ぎりぎりに来たもので、写真でしか拝見しておらず申し訳ありません。井上と申します。実物を見るのを楽しみにしておりますが、床からぼーっと光が出てくるというのは、私も今回のテーマが与えられたときに最初に思いついたものでした。それがヨコミゾさんの手にかかって、松下さんの手にかかって、こんなふうに発展していくんだなと。自分も同じところにスタートとしてはいたような気がするのですが、それはそれでまた、私とは違うふうに発展されていて、すごいなというふうに感じました。
床からの光はやはり日常にない光で、人というのは、そのようにないものを欲しがったりするから思いついたのかなと思っていたんですけれど、松下さんがお話されていたろうそくの光のように、暖められる光というのは床からぼっと出てくる光なのかなと。つまり、そのとき私が床からの光を思いついたのは、暖められるということを求めてそう思ったのかなと感じて伺っておりました。
真壁
新建築の山田さん、ご感想は。
山田
新建築の山田と申します。光の位置がすごく低くて、人が歩く場所の布のドレープ感がぼんやり照らされて、本当に光がよどんでいるというか、足元にぽわんと漂っているような印象ですごく素敵でした。ここは、歩くというよりもさまようような場所になっているなと思ったんですけれど、ヨコミゾさんに少しお伺いしたかったのが、このたくさんの家具同士の距離感と言いますか。やはりこの数がこの印象をすごくつくっているなと思ったんです。例えばこの家具はもっと少なくても成立するのかなと思ったのですが、家具のレイアウトや配置はどのようなところから決まってきたのでしょうか。
ヨコミゾ
正直なところ、ほとんど感覚的です。というのは、もともとショールームですから、ある密度で家具が置かれているんですね。まず僕たちがやったことは、その家具同士の間にあったパーティションを取り払いました。例えばリビングを演出しているコーナーのすぐ裏に書斎を演出するコーナーがあったりするので、その間にパーティションが設けてありました。それは今、全部今バックヤードに片付けてあります。そうすると、全然違うコーナーが背中合わせに接しているというのはやはり妙なんですよ。だから、そういうところは微妙にアジャストして、こっちであるリビングのイメージをまとめたら、少し距離を外したところに書斎のイメージというふうに調整しました。
もともとのコンセプトは、天井にぶら下がっている照明を一切外す、パーティションは全部取る、純粋に家具だけにする。その状態に1枚の布を加えるだけで終わりにするというものだったので、最低限の操作で済ませたいと思いました。でも実際はいろいろ欲が出てきて、片付けちゃった家具をまたもう一回出してきて並べ直したり、あるいは光を入れてみると透けていい色を出しそうな家具が見つかると取り替えてみたり、そういう細かいアジァストは、もう本当に限られた時間の中で、その場の感覚でやりました。考えてないといったら嘘ですけど、深く考えてない。極めて感覚的です。
山田
最小限に。
ヨコミゾ
最小限に。でも最大限の効果を狙ったというところでしょうか。
真壁
ただ、さっきヨコミゾさんもおっしゃったように、本当にこれがスタートで、できればあと数日いろいろな実験をしてみたいんだな。これはもう想像するしかないというところがあるけどね。ここに家具が1組しかなかったらどう見えるのかとか。いろんなものを目に焼きつけて思いを馳せるしかない。
松下
実は少しやり変えたくても、全て1枚の布の下ですから、潜っていかなければいけない。ボランティアの学生諸君がすごく頑張ってくれました。本当にこの場を借りてお礼を言いたいです。今日はお見えになれませんでしたが、布を縫ってくださったのは株式会社丸十の船戸社長という方です。ほとんどの方がそんな巨大な布の縫うためには体育館ぐらい広いところが必要だからできないとおっしゃったんですけど、船戸さんのスタッフは聞くところによると10畳ぐらいの広さで50メートルの布を縫い合わせて下さったそうです。おかげで完成しました。この場を借りて、本当にお礼を申し上げたいと思います。
また、この曲を作曲して下さった女性がいます。通常、赤ちゃんを出産するときの曲をプロデュースしている女性なんですね。株式会社シンフォニアの亀山さんといわれます。このエキシビションの内容を私が電話で説明しますと、80分の曲を作曲して提供して下さいました。